日本福祉大学

ローカル・アベノミクスの柱の一つは「まち・ひと・しごと」を創生する地域再生である。
少子高齢化する都心荒廃地、中山間地、そして被災地など「条件不利地域」では、制度の狭間を埋める地域力を回復させ、高齢者や女性の雇用機会を創出し、地域の福祉力を高めることが、地域再生の根幹をなす。住民による工夫と連帯を通じて、これら地域が福祉依存を脱し、成長に貢献し、あらたな市場を生み出す。この課題に挑戦する新しい職能が「福祉開発マネジャー」である。
本事業はその育成のために、産業界(社会的企業を含む)、地方政府、シンクタンク・コンサル、NPO、社会福祉法人、開発援助機関など多様なセクターのマネジャー層に、大学院レベルの遠隔教育の機会を提供する履修証明プログラムである。
現職社会人や家庭に入った女性にもアクセスしやすいe-ラーニングと週末フィールドワークを通じて、地域福祉と開発援助を融合する「福祉社会開発」アプローチを実践的に学ぶ。
文部科学省「高度人材養成のための社会人学び直し大学院プログラム」委託事業として実施される。


修得する能力

「福祉と開発の融合」に特色をもつ本プログラムが養成する人材は、福祉制度の不全、社会的孤立や格差、生活困窮の集中、地域的周辺化といった地域課題を分析し、実践現場における洞察と関係構築を通じて新しい政策や方法を見出し、グローバルな視野から問題解決を導いて、包摂的な社会形成に貢献できる新規の専門職、およびこうした専門職業人をコーディネートし、支援組織を運営できるマネジャー層専門家である。ただし履修者の職種や専門領域により、「福祉社会開発」に向けて修得すべき能力は以下のように多様である。


①福祉ワーカーにとっては、クライアントのニーズを地域課題としてとらえ直し、住民の支えあう関係を構築し、仕事づくり・まちづくりを視野に入れて、個別支援から地域支援へと広がるアプローチを身につけること。これは厚生省「社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会」(2000年)以来の、社会的包摂のための「つながり」づくりという福祉の方向性を、持続可能な地域再生へと展開させることになる。


②開発ワーカーにとっては、海外援助の現場で身につけた洞察とスキルを日本の現場で相対化し、日本の地域再生や地域福祉にも有効なアプローチに鍛え直すとともに、日本の経験に根ざした海外援助資源を豊富にすること。審議中のODA大綱見直しも、「日本再興戦略」を引用しつつ「日本経済の活性化にもつながる」開発援助を指向している。


③その他の分野の実践ワーカーにとっては、福祉社会開発の枠組みと主要なアプローチに立脚し、条件不利地域等で、住民組織をはじめとする主要アクターをファシリテートし、アイデアを媒介し、課題の発見と解決に貢献できること。


④中間支援組織のマネジャーにとっては、幅広い課題や事例を方法的に正しく分析し、組織内外のコミュニケーションを促進し、企画、広報、専門職コーディネート、アドボカシー、ソーシャルマーケティング等の組織戦略を身につけ、合意形成に基づくプロセスを管理し、持続的運営に結びつけること。


教育内容

本教育課程は、1年間を修業年限とする履修証明プログラムである。本学の通信制大学院および福祉経営学部(通信教育部)が10年余にわたり蓄積してきたインターネット利用の教育インフラとノウハウを活用して、通信通学融合型のプログラム(e-ラーニング+フィールドワークでの対面指導)とする。フィールドにおけるアクティブ・ラーニングとゼミナールを融合したオーダーメイド型の教育プログラムを展開する。
フィールドワーク運営には実務家教員を多く登用する。彼ら彼女らは、福祉開発マネジャーのロールモデル、キャリアモデルでもある。通信教育のみでは習得できない内容を、実務家教員自身の実践現場を活用したフィールドワークによって補完する。そのフィールドワークの効果的な実施のために、「事前学習」の映像教材を豊富に提供する。
福祉開発マネジャーの役割を、週末フィールドワークのみで学ばせることは困難であり、十分な事前学習のなかで、調査方法、地域での合意形成、事業の持続性など、マネジメントの諸側面を系統的に学ぶ。


修了後のキャリア展望

現状では、伝統的なソーシャルワーカーは既存制度の枠内で個別ニーズと制度を結ぶ支援活動をしている。彼ら・彼女らが、制度の狭間で多様化する複雑な福祉問題や地域再生に結びつくプログラム開発に対応できないことは、多くの現場で指摘されている。
「個別支援から地域支援へ」の視野とスキルをもつ人材は、現代福祉をリードできるばかりでなく、日本の海外援助の焦点となりつつあるアクティブエイジングや地域の再生にも、大きな戦力となる。
一方、青年海外協力隊を含む開発援助ワーカーは、日本の安定的な就業構造から外れて、貴重な経験が国内では活かされないことが少なくない。これを活かすには、単なる就労斡旋にとどまらず、各自の経験を相対化する枠組みを学び、国内の地域課題への適用能力を身につける必要がある。
本プログラムは、人的にも、こういった福祉人材と開発人材を融合させて、相互に学びあう場を形成することで、それぞれの新しいキャリアパスを開く。また修了生を新たな職能集団として本プログラムが支え、人材バンクや同窓会活動を通じて個々のキャリア開発を支援する。
たとえば、福祉開発マネジャーとして活躍するセクター(シンクタンク・コンサルタント会社、地方政府、中間支援組織(NPO)、社会福祉法人、開発援助機関)と本学各種研究センターとの共同研究において、修了生にカウンターパートしての役割を担ってもらうことで、実務と研究の両面での成長が確保される。